http://tenshoku.inte.co.jp/msn/news/0234.html
1000万円で宇宙に行く!
民間宇宙企業の挑戦
アニメや映画の世界では当たり前に描かれている「宇宙生活」。これまで宇宙へ飛び立ったのは、選びに選ばれた宇宙飛行士がほとんどだった。一般人が地球を離れるのは夢のまた夢と思われていたが、どうも最近は事情が違ってきているようだ。
スタートした民間宇宙ビジネス
人工衛星ビジネスから新素材開発まで、宇宙には今までの人間の生活を一新させる可能性が秘められている。しかしながら、宇宙が始まるのは対流圏をはるかに越えた高度100km以上からだ。空気も水も生命のなく、剥き出しの放射能が降り注ぐそこは人間にとってあまりに過酷であり、ただ行って戻ってくるだけでも非常な困難を伴う。
2003年2月、アメリカのスペースシャトルが空中分解事故を起こし墜落した。調査委員会が設置され、その原因を発射時に断熱タイルが剥がれたためと結論つけたが、それ以降、打ち上げが延期になっている。そのため、国際宇宙ステーションへの物資輸送もロシアのソユーズ宇宙船に頼っているが、ソユーズ宇宙船は1600回の打ち上げで1度も有人事故がないという安全性を誇る(スペースシャトルは100回の打ち上げで2回事故が発生した)ものの、当初のロードマップから大幅に計画が遅れているのが現状だ。
ソユーズの高い安全性は機体が使い捨てであることと、設計思想の違いによる。使い捨てのソユーズは毎回、新品の状態だが、スペースシャトルは再利用型であるため、飛行時間に比例して故障率が高くなる。またソユーズは宇宙に行くことを最大の目的にしているが、スペースシャトルは宇宙に貨物を運ぶことを大きなミッションとしている。そのため、ソユーズの積載量は約3トンだが、スペースシャトルは約18トンだ。その分、機体自体の質量も大きくなり、それが大気圏への再突入時のリスクを大きくする。スペースシャトルは機体の再利用により運用コストを下げることが目的(当初は使い捨て型の1/3になると見られていた)だったが、2回の事故によりコストは跳ね上がり、反対に使い捨て型の3倍のコストがかかっているといわれている。
非常にハードルが高い宇宙開発だが、ハードルが高いほど燃えるのもまた人間だ。国がダメなら俺たちが、と民間企業が進出を開始した。ライブドアの堀江社長が役員になった非営利団体「X PRIZE」、再利用型民間宇宙船の実用化コンテンスト「X PRIZE」で懸賞金を獲得した「Scaled Composites(スケールドコンポジット)」社、そして同社の宇宙船を使った宇宙観光事業を計画しているヴァージングループの「Virgin Galactic(ヴァージンギャラクティック)」社、元ライブドア取締役の榎本大輔氏が20億円を支払い、民間人として宇宙旅行を楽しむ「Space Adventures」社、遺骨をカプセルに詰めて衛星軌道に打ち上げる宇宙葬サービス会社「Earthview」社などこの数年の間に多種多様な宇宙ビジネス企業が世界中で立ち上がっている。
国家主導の宇宙開発は学術・軍事・経済と密接に関係し、宇宙に行くことは手段であって目的ではなかった。それに対して、こうしたベンチャー宇宙ビジネスは多くが宇宙に行くこと自体を目的にしている。行く手段がないのなら、自分たちで作ってしまおうという、実にシンプルで真っ当な動機で宇宙船を作っている。その違いがユニークだ。
ちょっとだけ宇宙に行く、それなら可能だ
宇宙に行くことを目的にすると、宇宙開発のハードルは一気に下がる。ようは地上100kmまで行って帰ってくる乗り物を作ればいい。地上100kmまで何十トンの荷物を運び、そこで実験し、滞在し、等々のミッションはすべて不要だ。目的は観光なのである。
そういうわけで打ち出されたのが準軌道宇宙旅行、つまり地球を何周もぐるぐる回る衛星軌道に乗るのではなく、ちょっとだけ(数分間程度)宇宙に行って戻ってくる。地球を1周すると軌道なので、ちょっとだけは準軌道(サブオービタル)と呼ばれる。
地球から離れて何日も何週間も宇宙で過ごすというのは一般人にとってかなりのハードルだ。厳しい訓練を受けて出かけていくとそこは宇宙船の中なのである。宇宙飛行士や研究者にはいいが、ただの観光客には退屈だろう。そもそもほとんどの人にとって宇宙に行きたい=無重力を感じたい、地球を外から見たい、であり、ならば数分間あれば十分ではないか?というのが彼らの考えだ。それに準軌道ならば打ち上げが安上がりだ。「Space Adventures」社では準軌道宇宙旅行を1人あたり1100万円程度とし、今年中のサービス開始を予定している。
夢もロマンもコストもすべてお手軽な宇宙観光ビジネスだが、これはあくまで小手調べ。「X PRIZE」はいずれ宇宙産業は数兆円規模に拡大すると見込んでおり、そのための先行投資の意味合いが強い。
こうした宇宙ビジネスの親会社はほとんどがIT系ベンチャー企業だ。社長はいずれも30〜50代、子供の頃にアポロ打ち上げを見た世代である。宇宙を開拓する未来を信じていた彼らだったが、現実には軍事や経済の前にいつの間にか宇宙は遠くなっていた。今、彼らは小さな国の国家予算を超える莫大な資金力を使って、かつてのロマンを買い戻そうとしている。その行為こそが実に未来的なのだ。
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